あとのまつり by  野生会議99 

終ってしまったイベント、集まり、企みのご報告ですよー。

「蝶になる時とイザイホーの原像」喜山荘一(第2回『トーテムとメタモルフォーゼ』・野生会議99企画つながるゼミナール④)

 このシリーズで最大のギフトになると思い、相当に意気込んで準備したが、当日(6月22日)のお披露目も力んだ。 時間は足らず、これで二回分でもいいくらいだった。

 今回は、具志川島の岩立遺跡西区にフォーカスした。植物トーテムにとどまらず、全トーテム段階を通じても、これほど貝塚の詳細が記された報告書は少ないから、限度いっぱいの読解をしておきたかったのだ。

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5B層

 その読解(貝読)の核のひとつは、貝塚を築いた集団の人数だ。5層は人骨が出土しており、そのため考古学調査で人体数も報告されている。「トーテム-メタモルフォーゼ仮説」では、考古学の遺物は「人」を表す。琉球弧の場合、なかでも貝はその主役だから、貝によって人数を割り出すことができるが、それが調査による人体数とぴったり一致することをまず示した。

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 貝から人数に接近できるというだけではない。貝の置かれ方は人を示すと同時に、トーテムを示す。5B層のトーテムは、ノカラムシであり、それが「この世にいる場」では苧麻の葉で表されている。

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 こうやって紐解いてゆけば、貝を通じてトーテム人が見ていた、貝身体としての「ノカラムシ人」像を復元することも可能だ。

 そしてさらに、5B層では、「あの世に還る場」で、蝶への化身が思考されていることを示した。それはひとめで分かるほどにはっきりしている。蝶が死者や霊魂の化身であるという言い伝えには由来がある。それは「霊魂」が発生したときに、同時に生まれた考えだった。そのうえそこには、ハジチ(Japonesian Ryukyu Tribal Tattoo)の発生を物語るイモガイ(貝製品)も置かれている。

 こうした手がかりをもとに、発表は久高島の名高い祭儀イザイーと国頭安田のシヌグの原像に移っていった。トーテムの眼でみれば、これらの祭儀の発生も見えてくる。蝶人としてのカミになり、「あの世」とのつながりを生き生きとさせたのだ。

 

 いくつか、感想も寄せていただいた。

 「貝塚がごみ捨て場ではない、という所から全て感動でしたが、遺跡の配置、さなぎの形、これから喜山さんの視点で考古学の資料が見てみたくなりました。続きが聞きたい!「野生会議」のコンセプトもものすごく興味があります」(靴屋さん)

 「これまで人類の起源等について、正直興味を持った事もありませんでした。本日初めて参加させて頂き、貝のお話はよく解りませんでした。蝶の話では「なるほど」と思う事があり、祭りの意味や何を表しているのか興味深かったです」(裁原広幸さん)

貝塚を考古学ではなくトーテムという切り口から考えることが新鮮でした」(素隠居さん)

「人間の古き時代の姿を今に伝えるような、面白いものとして貝塚を見始めました。正しく“古層”ですね。」(小林智靖(青年)さん)

「サナギ、メタモルフォーゼ、チョウ、♡」(片岡慎泰(独文学研究者)さん)

 

 「植物トーテム―蝶」の対は、まだまだあり、次回に向けて貝塚が教える限り、そのペアを拾い上げたいと思っている。そして、島人気質にもっとも影響を与えた「サンゴ礁トーテム」に入っていくことになる。

 もちろん、貝塚漁りが趣味なのではない。それを通じて神話や伝承、祭儀、無意識にしている心の動かし方の機微をよく知ることで、人類のこころの母型を掴みたいのだ。

 

 

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