あとのまつり by  野生会議99 

終ってしまったイベント、集まり、企みのご報告ですよー。

「ヘビとトカゲと生の反復」喜山荘一(第6回『トーテムとメタモルフォーゼ』・野生会議99企画つながるゼミナール④)

 野国貝塚の約6000年前の層では石器群が検出されている。グリッドの報告しかないから、グリッド内の位置と方位を想像して配置してみると、ここにヘビが見えてくる。C4の顎下の模様、A7からA8にかけた肛板、尾下板の特徴をみると、これはハブだ。

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 気になるのは、A8の「卵」の置かれ方で、切られた胴部から離れた場所にあるようなのだ。同じ段階の渡嘉敷島の船越原貝塚では、石器の詳細は報告されていないが、石器群の並びは画像で分かる。これも野国貝塚と同じ土器の場だから、並びにヘビを確認すると、ここでも「卵」は中断した胴部から離れた場に置かれているようにみえる。

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 これは、「卵」が身体から産み落とされたものではなく、分離した身体として考えられていることを意味している。貝の詳細が報告されている新城下原第二遺跡Ⅸb層をみても、「卵」貝は独立して扱われておらず、尾下板の化身貝とセットになっている。

 「卵」は分離した身体であり、身体の一部と見なされた。これは「死」を認めないヘビ段階にとって重要だった。卵から変態して出現するヘビは、もともとの身体の一部からなるものとして、脱皮行為のひとつと見なされたのだと思う。

 「卵」が出現するものとして意識されるようになるのは、次のトカゲ段階においてだ。ヘビに脚の生えたトカゲは、動物性の自覚を表している。「吸って(呑んで)吐く」がヘビの思考であったとすれば、「食って出す」のがトカゲの思考だ。ここで、子、糞、卵は等価に見なされる。

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 まずシャコガイが、食らうトカゲの「口」の重要な化身貝になる。屋我地島大堂原貝塚Ⅶ層や波照間島下田原貝塚がこの段階になる。そして、植物や動物から、食から性へ生態を転移させるように、その通りに、生を継ぐことへ関心は移行する。

 ここで、彼らのこころを捉えたのは「卵」だった。トーテムであるオキナワトカゲもキシノウエトカゲも「卵」を見守る。ここに、親トカゲと卵、子トカゲという場面が生まれる。

 トカゲ人たちは、よく捉えてみると、トカゲ人とトカゲ人のあいだに「卵」を持つ。トカゲ人は、卵人になったのち、ふたたびトカゲ人として出現する。それなら、この動かない「卵」人とは何なのか。それは、動かない身体(死)と同じである。卵とは何か。その果てしない自問のなかで、卵から死が立ち上ってくる。この過程は、トカゲの「口」を表す土器をつくるのを止めて、ヤコウガイの蓋で示される「卵」の化身貝を集めるのに執心した与那国島のトゥグル浜遺跡に詳しい。

 こうして「死」が発見された。人には「死」という過程がある。このとき、トカゲの「口」の化身貝だったシャコガイは、開いては閉じて生命の放出と吸収を繰り返す「卵」貝に見えてくる。ここで、トカゲはメタモルフォーゼしてシャコガイとなり、シャコガイが新たなトーテムになる。

 トーテムとメタモルフォーゼの第6回のうち、「卵」についてはこんなことをお話しした。少人数でこじんまりした集まりになったが、和やかに議論を深めていって印象深い夕べになった。ご参加者に感謝。

 

(感想の一部)

とても興味深かったです。脱皮と卵の関係性など、もっとお聞きできればうれしいです。(匿名)

ヘビ→トカゲ→カメに移ってほしかった!
日本の鶴亀だったり、ハワイのホヌだったり、
世界のどこかではカメトーテムもあったのかな。(靴屋